この時だけは。

台所の冷凍庫の上に腕時計の丸の部分が置いてある。

どうしたの、これ？と尋ねる。

バンド部分が壊れたからそこに置いたの。

想定通りの答えである。なんでわざわざ聞いたのか。何となく流れがそんな感じだった。

携帯電話、スマホと時代は流れ、いつでも時間以上のことを知れるようになった。が、やはり時間だけ知りたい時は腕時計が便利である。畑仕事の時なんか特に。

以前、畑を耕していた時、写真撮りを兼ねてスマホをお尻のポケットに入れていたが、いつの間にか畑から生えており土まみれだった。他にも水やりで濡れても困るし、かと言って夢中になり過ぎてお茶の時間を逃すのも嫌だ。

そこで腕時計である。大概、生活防水で水没させない限り大丈夫だ。長くなったが腕時計はあった方がいいだろう、ということで新しい腕時計を勝手に送り付けた。気を遣ってくれたのか本当に気に入ってくれたかはわからないが可愛いと言ってもらえて一安心だ。

そこから思わぬ進展があった。きっと気遣い2割、気に入った8割くらいだったのであろう、返礼品として地元のアイスの箱詰めが届いた。こちらは嬉しさ10割だ。アイスを送ったから、の連絡を受けて、まだ受け取ってもいないのにテンションMAX。

ちなみに不在で受け取り損ねて時間ギリギリに電話したら

冷凍品だから気にしてたんですよ、すぐ行きますね！

と気にかけてくださっていた上に再配達時間ギリギリの電話に爽やかに対応してくださったクロネコさん、本当にありがとうございます。お体に気を付けて今後もよろしくお願いします。

と、アイスのための行動は早い。人が変わると言っても過言ではないだろう。

いつだったかに告白したが基本は自己中心的な人間だが外では気を付けているし、何事も面倒なので流れに身を任せて生きている。そう、普段の買い出しはレジが混んで進まなくても、隣の方が早かったな、ま、いいけど。など思いつつ、まんまとレジ周りのお菓子をカゴに追加しちゃったり、ボ～っとしたりしながらレジが終わるのを待つ。

しかし、買い物カゴにアイスが入っている時は別だ。一刻も早くレジを抜け、帰宅し冷凍庫にアイスを入れなければならない。普段ならカゴ詰めが丁寧な店員さんに尊敬の念さえ抱くのだが、それが2人、3人と続くとあ”～っっ！と急に心が狭くなる。

私はっ、アイスをっ、早急にっ、持って帰らねばならぬのだっ！と心の中で叫ぶ。挙動が落ち着かず、不審者まっしぐらである。そんな私に私は言いたい。ドライアイスも買え。